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かわさきマイスター紹介

プレス順送金型設計製作 大橋明夫さん

熟練した技術が難易度の高い加工品を作る際の要に

提供:川崎市
本日お話を伺った大橋明夫さんは平成11年度にかわさきマイスターに認定されました。大橋さんはプレス順送の金型の設計製作に熟練した技術を持っています。プレス順送は全工程を1個の金型に組み込んで1台のプレス機で製品を仕上げてしまいます。そのため金型は大変複雑な構造を要求され、作るにあたっては高度な技術が必要とされます。大橋さんの作る金型があって初めて難易度の高い加工品を低コストで大量生産できます。
プロフィール
大橋 明夫(おおはし あきお)さん

太宰治の出身地として知られる青森県金木町(現・五所川原市)生まれ。ものをつくる職場に就職したいという希望から、中学卒業と同時(昭和36年)に現在勤める㈱クレールの前身の清水精器に入社。当初は「旋盤」ということさえしらなかったが、学校の先輩がいたということもあり、感動しながら加工技術の1から10まで学んでいく。現在のCAD―CAM(コンピュータによる設計・製造)システムで金型を作り始めたのは40歳のころ。現在は㈱クレール工場長として現場の指揮や後継者の育成にあたっている。
これは、大橋さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

大橋さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

ものづくりは小さいときから好きでした。といっても、親戚の材木屋から貰った木材で家の周りにウサギ小屋を作るといったことでしたが。それで中学を卒業すると、ものを作る会社に就職したいと思い地元出身者2,3名と一緒に清水精器(現・㈱クレール)に入ったわけです。最初は旋盤ということさえも知りませんでしたが、先輩がいたということもあって加工の1から10まで感動をしながら覚えていきました。高度成長期が始まったばかりで、プレス産業も伸びてきていた時代。プレスから始まって金型作り一本にのめりこんで今日まで来たわけです。

やっていて1番面白いと感じることは何ですか?

左から右の順番で1枚の金属板から製品が作られて行きます。
左から右の順番で1枚の金属板から製品が作られて行きます。
1枚の金属板から製品を図面通りに作った時の達成感、喜びといったものですね。それだけを求めてきたように思います。その感情は今でも変わりません。40歳のころCAD-CAMシステムを使いだしましたが、最初のころはコンピュータの前に座りながら背後には保険としてそれまで使っていた手書きで図面を書くものを置いておきましたが、後ろを振り向いたら終わりという覚悟でした。これをマスターしないと飯が食えなくなるぞって。しかしCAD-CAMは習得するとどんな複雑な形でも思ったものがイメージ通りにできていきますからやりがいがありました。その当時が一番面白かったかも知れません。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?

気が付いたらここまで来ていたというのが実感です。ですが、まだまだ分からないことだらけ。そこを追及するとしたら年数がたりません。外部から見ていると、同じ事を40年もしてきてよく飽きないな、と思うかも知れませんが、中身はそのつど違うのです。例えば、同じ製品を作ろうとする際でも、前とは強度を少し調整するなどアレンジします。勉強しないとわからない部分も出てきますし、常に新鮮です。だから、ここまで来られたのかなとも思いますが。

苦労したことはありますか?

手に持った製品の加工プログラムがコンピュータに入っています。
手に持った製品の加工プログラムがコンピュータに入っています。
先ほども言いましたが、CAD-CAMへの切り替え時期にはちょっと頭の中が真っ白になりましたね。しかし、仕事上では愚痴をこぼしたくなるようなことはありませんでした。皆で一杯飲んでいる時も、愚痴よりは仕事の話で盛り上がっていましたから。先代の社長もものづくりの好きな人でしたので、研究開発的な部分ではけっこう自由にさせていただきました。責任もありましたが、それ以上にやりがいがあった。そういう意味では恵まれていました。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

1台の順送プレス機に加工の全工程が組み込まれています。大橋さんはそのプロセスをプロデュースします。
1台の順送プレス機に加工の全工程が組み込まれています。大橋さんはそのプロセスをプロデュースします。
マイスターにはプレス順送・金型設計製作で認定されていますが、自分としては1枚の金属板から製品を作っていくプロセスをプロディースできるということだと思っています。例えば旋盤がすご腕だとかスライスに高度な技を持っているとか、そういう一つ一つが人より優れているとは思っていませんが、これはこうしたほうがいいといったアドバイスです。平板から何かを作りだそうという時、全体の注意点、加工順、仕上げの際のポイントなどのアドバイスは大事な要素で、その集大成がいい製品を作る。ですから私は図面の段階でそれを書き込み出力して渡すようにしています。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください。

右の製品は左の素材を削り取って作り上げます。
右の製品は左の素材を削り取って作り上げます。
例えば私の仕事はプレスとか板金とか呼ばれていますが、呼ばれ方はともかく、材料を徐々に形を変えながら何かを作り出すということに意味があります。そしてその時の達成感、それがものづくりの魅力ではないかと思いますね。旋盤で削ったり機械で削ったり、いろいろな道具を手段として一つのものを作り上げていく。それが面白いのです。15歳でこの世界に入り、このまま行くとおそらく65歳まででしょうが、その感覚を味わえてきたということは、たいへん恵まれたことだと思います。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

マイスターに認定されるにあたっては当社社長の推薦があって市が認めてくれたわけですが、自分自身に今までしてきてよかったのだという査定なりご褒美なりを言えたことです。後、何年この仕事に携わることができるかわかりませんが、さらに張り合いを持って従事していけます。また、私というよりはマイスターの皆さんの地道に一つの技能に磨きをかけていくという姿なりが、特に若い人の励みになってくれればいいと思います。

後継者を育成するために、何に取り組まれていらっしゃいますか?

若い人には、この会社がものづくりの会社として存続していくためのベースをしっかり理解してもらいたいということが基本的考えとしてあります。そのための勉強会などを長年開いてきていますが、普段していない作業を教えても覚えるのは困難のようですね。実際に現場で困った時に教えてあげるのが一番いい。ですから、困った時に聞かれれば徹底的に説明するようにしています。また、広く全員にというのには限界がありますので、柱になる人材を絞って育てておこうという気持ちから現在ターゲットを選び、がんばってもらっています。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

ものづくりというと、時間的にも物理的にもけっこう大きな範疇で考えられがちですが、われわれがしているのはその一部分をこつこつして来ているだけで、いわば隙間市場的な部分です。それでも職業として成り立っているわけですから、何かを目指したのなら継続して前向きに挑戦してもらいたいですね。だんだんと技が付いてくるにつれ面白さも増していきますから。

最後にこれからの活動について教えてください

私が居ることで少しでも周りが助かるなら、なるべく長く働いていたいですね。マイスターとしてもイベントなどいろいろなことに参加していきたいと思っています。先ほど言いました柱になる人材は現在37歳ですが、後継者として早く一本立ちできるようできる限りのことをお手伝いしていきたいとも思っています。

どうもありがとうございました。インタビューに答える大橋さんは時折、遠くを見つめるようなしぐさを見せました。それは15才で川崎の地に来てからの道のりに思いをはせているかのようでしたが、大橋さんの一途にものづくりに励んで来た姿は誰もを元気づけ励まします。
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